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『虎に翼』第11週「女子と小人は養い難し?」ネタバレあらすじ感想

目次

『虎に翼』第11週のあらすじ(俯瞰)

『虎に翼』第11週「女子と小人は養い難し?」は、第51回から第55回(2024年6月10日〜14日)の5話です。食糧管理法を担当した花岡が、闇市の食べ物を拒んで栄養失調で亡くなった衝撃から幕を開けます。法曹界にも世間にも波紋が広がるなか、寅子は新設される家庭裁判所の設立準備室へ異動します。少年審判所と家事審判所を二か月で合併させる難題に、変わり者の上司・多岐川や久藤と向き合う日々が始まります。協議が行き詰まる終盤、寅子は弟・直明の言葉に望みを託します。再会と別れ、そして戦争孤児の問題が静かに重なる一週です。

第51回(6月10日・月)花岡の死が法曹界を揺らす

第11週の初回は、前週から続く花岡の死の余波を、二つの視点から描く回でした。寅子だけでなく、戦地から戻った轟の慟哭がもう一つの軸になります。

誇りを貫いた花岡の最期

食糧管理法を扱う判事だった花岡は、違法な闇市の食べ物を一切口にせず、配給だけで暮らしていました。その結果、栄養失調で命を落とします。法を裁く者が、その法のために自らを律して倒れた事実は、法曹界だけでなく世間にも大きな衝撃を与えました。

気落ちする寅子に、桂場は静かに言葉をかけます。「我々にできることは泣くことではない」。感情に流されず、残された者が前を向くことを促す台詞でした。冷たく聞こえて、その奥に痛みがにじむ桂場らしい一場面です。

轟とよねの再会

同じころ、戦地から帰還したばかりの轟太一も絶望の底にいました。明律大学で共に学んだ花岡を喪い、轟は再会した山田よねに胸の内を吐き出します。「ほれてたんだろ、花岡に」とよねに問われ、轟は涙ながらに語りました。

花岡がいなければ弁護士を志さなかったこと、戦争のさなか「あいつが判事になって兵隊に取られずに済むと思うとうれしかった」こと、「あいつのいる日本へ生きて帰りたいと思えた」こと。生きる支えだった存在を失った男の慟哭が、戦争が奪ったものの大きさを突きつけます。

花岡の死をめぐる轟の叫びは放送直後から大きな話題を呼び、戸塚純貴の演技に対する反響が広がりました。週の幕開けにふさわしい、重い一話です。

花岡の死は史実の食糧管理法違反を裁いた判事・山口良忠の餓死がモデルとされ、当時実際に社会問題になった出来事だそうです。

第52回(6月11日・火)寅子、家庭裁判所設立準備室へ異動する

悲しみの余韻を残しつつ、物語は一気に新しい舞台へ動きます。GHQの通達が、戦後司法の大きな改革を起動させる回です。

GHQ通達と桂場の始動

GHQからの通達により、桂場たちは家庭裁判所の設立に向けて動き出します。女性や子どもの権利を守る新しい裁判所を、二か月という短期間で全国に発足させる——その実務の最前線に、寅子が配属されることになりました。

翌昭和24年から新たな少年法が施行され、少年は家庭裁判所の審判に付されると定められていました。つまり、年明けの発足は動かせない期限だったのです。寅子たちの任務は、従来の少年審判所と新設の家事審判所を合併させることでした。

変わり者の上司・多岐川幸四郎

準備室で寅子を待っていたのは、新しい上司・多岐川幸四郎でした。趣味は滝行という強烈な個性の持ち主で、その言動に寅子はすっかり不安を覚えます。当初の多岐川には、合併への熱意があまり感じられませんでした。

多岐川を演じるのは滝藤賢一さんです。モデルは「家庭裁判所の父」と呼ばれた宇田川潤四郎とされ、七三分けに細い口ひげの、情に厚く人懐っこい人物だったと伝えられています。第11週は、この新しい登場人物が物語の推進力になっていきます。

準備室は法曹会館の屋上に急ごしらえした掘っ建て小屋だったと描かれ、戦後の混乱と人手不足の象徴になっていたようです。

第53回(6月12日・水)多岐川が寅子を叱責し、本心を見せる

合併協議が進まないなか、寅子の行動が上司の意外な一面を引き出す回です。多岐川の熱意が、ここで初めて表に出ます。

進まぬ合併協議への直接交渉

家事審判所と少年審判所の合併協議は、まったく進展しませんでした。期限が迫るなか、戸惑いながらもできることを探した寅子は、多岐川に直接交渉を試みます。やる気の見えない上司に、自分から働きかけたのです。

ところが多岐川は、寅子を褒めるどころか「なぜ早く言わない」と叱責します。突き放すような反応に、寅子も視聴者も意表を突かれます。多岐川という人物の読みにくさが際立つ場面でした。

アメリカのファミリーコートが照らす理想

叱責のあと、多岐川は寅子を久藤のもとへ連れて行きます。久藤を演じるのは沢村一樹さんです。そこで語られたのは、アメリカのファミリーコート——家庭裁判所の理想像でした。

合併という事務作業の先に、傷ついた家庭や少年を救う仕組みを作るという志がある。多岐川は、その理想に向けて本気で動いていたのです。初めて上司の熱意に触れた寅子は、変わり者だと思っていた多岐川を見直すことになります。叱責の真意が理想への焦りだったと分かる、転機の回でした。

第54回(6月13日・木)汐見の妻として現れた崔香淑との再会

仕事の物語に、思いがけない私的な再会が差し込まれます。かつての学友・崔香淑が、別の名を背負って現れる回です。

「香子」と名乗る妻の正体

寅子は、同僚の汐見を自宅へ送り届けます。そこで妻として迎えたのが、「香子」と名乗る女性でした。その人こそ、朝鮮半島から明律大学へ留学していた崔香淑、かつての「ヒャンちゃん」だったのです。

崔香淑を演じるのはハ・ヨンスさんです。一度は故郷へ帰ったはずの彼女が、日本人の名を名乗り、汐見の妻として日本で暮らしていた——その事実に寅子は驚きます。再会を喜ぶはずの場面が、複雑な空気に包まれます。

「誰にも話さないで」という願い

崔香淑は、日本に戻っていることをかつての学友たちに隠していました。再会を素直には喜べない様子で、寅子に告げます。「誰にも話さないで。トラちゃんはトラちゃんの仕事を頑張って」。

本名を捨て、日本名で生きざるを得なかった彼女の事情が、台詞の重さからにじみます。戦中戦後の朝鮮半島出身者が置かれた立場を、再会という形で静かに描いた回でした。家庭裁判所の話と並走しながら、本作が一貫して扱う「立場の弱い人」の主題が浮かびます。

崔香淑の再登場は、本作が「加害」の歴史にも踏み込む姿勢の表れだと評する記事も出ていたようです。

第55回(6月14日・金)寅子が弟・直明に賭ける

第11週の締めくくりは、合併協議の突破口を寅子の弟が開く回です。理屈ではなく、現実の声が大人たちの心を動かします。

動かない大人たち、賭けるべき言葉

家事審判所と少年審判所の合併説得は、依然として難航していました。家事審判所長の浦野、少年審判所長の壇——双方の責任者が首を縦に振りません。年明け1月1日の家庭裁判所発足という期限は、すぐそこまで迫っています。

行き詰まった寅子は、弟・直明に望みを託すことを決めます。直明を演じるのは三山凌輝さんです。直明は東京少年少女保護連盟の一員として、戦争孤児の現実に日々向き合っていました。

戦争孤児の現実が心を動かす

姉に頼まれた直明は、浦野と壇に向けて、戦争孤児たちが置かれた過酷な現実を語ります。制度の都合や組織の面子ではなく、いま救いを求めている子どもがいるという事実。その訴えに、かたくなだった二人の心がついに動かされます。

専門家でも上司でもない、現場を知る若者の言葉が事態を前へ進めた——理想を掲げる多岐川、実務に走る寅子、そして現実を語る直明。三者の役割が噛み合い、家庭裁判所の発足へと物語が大きく踏み出す、第11週にふさわしい締めくくりでした。

家庭裁判所は昭和24年1月1日に実際に発足しており、ドラマの期限設定はこの史実に沿っているそうです。

『虎に翼』第11週のネタバレまとめ

第11週「女子と小人は養い難し?」は、花岡の死という喪失から始まり、家庭裁判所設立という創造へ向かう一週でした。花岡は闇市を拒んで栄養失調で亡くなり、桂場は「泣くことではない」と寅子を促します。轟はよねの前で慟哭し、再び弁護士の道へ。寅子は設立準備室へ異動し、変わり者の上司・多岐川や久藤とともに、二つの審判所の合併に挑みます。協議は難航しますが、多岐川の理想と寅子の行動、そして弟・直明が語る戦争孤児の現実が壁を崩していきます。崔香淑との切ない再会も挟みつつ、物語は年明けの家庭裁判所発足へと進みました。

『虎に翼』第11週──脚本の選択を読む

この週で目を引くのは、「死」と「誕生」を同じ一週に並べた構成です。花岡という一人の判事の死から始め、子どもや弱者を守る家庭裁判所の設立へと話を運ぶ。法に殉じた者の悲劇を、新しい法の仕組みを生む原動力に変える流れが組まれているように見えます。サブタイトルの「女子と小人は養い難し?」は論語・陽貨篇の言葉で、女性や徳のない者は扱いにくいという旧来の価値観を指すとされます。末尾の「?」が、その通念に疑問符を突きつける作りなのかもしれません。多岐川や直明という新しい登場人物に突破口を担わせたのも、寅子一人の奮闘に閉じない群像として戦後司法改革を描くためじゃないかなと感じられます。

多岐川のモデルとされる宇田川潤四郎は「家庭裁判所の父」と呼ばれ、滝行を好むなど逸話の多い実在の判事だったと紹介されています。
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