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『虎に翼』第10週「女の知恵は鼻の先?」ネタバレあらすじ感想

目次

『虎に翼』第10週のあらすじ(俯瞰)

第10週「女の知恵は鼻の先?」は、寅子(伊藤沙莉)が法律の世界へ本格的に戻る転機の週です。昭和22年、寅子はアポなしで司法省の仮庁舎・法曹会館へ乗り込み、裁判官への道を直談判します。そこで出会うのが「ライアン」こと久藤頼安(沢村一樹)。彼の口添えで、寅子は民事局の民法調査室に職を得ます。新憲法に合わせた民法改正という大仕事が始まりますが、保守派の神保教授(木場勝己)の前で寅子は引いてしまい、桂場(松山ケンイチ)に「うすっぺら」と評されます。かつて見下していた「すんっ」を自分がしてしまう葛藤。そんな寅子の背中を押したのは、偶然再会した花岡(岩田剛典)の言葉でした。穂高(小林薫)の的外れな申し出に怒った寅子は本来の姿を取り戻し、審議の場で堂々と意見を述べます。週の終わり、寅子は花岡が闇市の食料を拒んで餓死したことを知らされます。

第46回(6月3日・月)寅子が法曹会館に乗り込み「ライアン」久藤と出会う

裁判官編の幕開けです。第46回は、寅子が再び法律の世界へ足を踏み入れる重要な一歩を描きます。

アポなしの直談判と門前払いの危機

寅子は司法省の仮庁舎である法曹会館に、約束も取らずに乗り込みます。裁判官として採用してほしいと人事課に直談判するためです。当然ながら受付では取り合ってもらえず、門前払いを食らいそうになります。一度は法律の道を離れた寅子にとって、ここからの再出発は容易ではありませんでした。

その場に居合わせたのが、寅子の前に立ちはだかる桂場でした。桂場は「司法の砦」を守るという信念から、一度辞めた寅子に厳しい態度を崩しません。寅子の再起の前に、いきなり高い壁が現れます。

うさんくさい殿様判事・久藤頼安の登場

膠着した状況を動かしたのが、久藤頼安です。「ライアン」というニックネームで自己紹介する、キザでつかみどころのない判事です。久藤藩の末裔で「殿様判事」とも呼ばれる人物が、門番の対応を一変させます。

久藤は「人手不足の上に、GHQも彼女を見たら喜ぶ」と寅子の採用を後押しします。こうして寅子は裁判官としてではなく、民事局の民法調査室で働くことが決まります。新憲法下での法改正という、寅子の新たな舞台が用意された回でした。沢村一樹が演じる久藤には「ピッタリの役」という反応も寄せられたと報じられています。

ライアンこと久藤のモデルは、家庭裁判所の創設に関わった内藤頼博とされています。うさんくささの奥に司法を変える力を秘めた人物だそうです。

第47回(6月4日・火)寅子が「すんっ」をして桂場に「うすっぺら」と言われる

新しい職場に立った寅子が、自分の甘さと向き合う回です。第47回は、寅子の内面の揺らぎを丁寧に描きます。

GHQから突き返された民法改正案

寅子は、GHQから「生ぬるい」と突き返された民法改正案を手にします。婚姻における名字の問題など、新憲法が掲げる男女平等をどう民法に落とし込むかが課題でした。久藤は「早急に決めないと善悪が宙ぶらりんになる」と、改正の急務を口にします。

その日には、GHQのホーナーも司法省を訪れます。占領下で進められる法改正の現場の空気が、寅子を取り囲んでいきます。

かつて軽蔑した「すんっ」を自分がしてしまう

この回の核心は、寅子の「すんっ」です。寅子は職場で謙虚に振る舞い、波風を立てないようにやり過ごそうとします。久藤からは「思ったより謙虚だ」と言われてしまいます。

桂場はそんな寅子に「うすっぺら」と言い放ちます。寅子はかつて、女性が本心を押し殺してやり過ごす「すんっ」を軽蔑していました。その「すんっ」を自分がしてしまったことに、寅子は深く苛まれます。自分の認識の甘さを悔しく感じる姿が、次の展開への伏線になります。

「すんっ」は本作を象徴する言葉として、放送当時から繰り返し話題になったそうです。寅子自身がそれをしてしまう皮肉が効いた回でした。

第48回(6月5日・水)神保教授が民法改正に「この国を破滅させる気か」と反対

保守派との真っ向勝負が始まります。第48回は、民法改正をめぐる価値観の衝突を映します。

神保教授の登場と改正への懸念

民法改正審議会の委員として、東京大学の神保教授が登場します。神保は改正案に対し「この国を破滅させる気か」と強い言葉で反対します。家族のあり方が根本から変わることへの危機感が、保守派の立場として示されます。

神保は「民法も変わって、家族のあり方さえ変わってしまったら?」と寅子に問いかけます。これは寅子の覚悟を試す問いでもありました。

無難な回答でお茶を濁す寅子

ところが寅子は、ここでも「すんっ」として無難な回答でお茶を濁してしまいます。神保の議論に誘導される形になり、自分の言葉で反論できません。前の回で桂場から「うすっぺら」と言われたばかりの寅子は、まだ本来の姿を取り戻せずにいました。

一方でこの日、寅子は婦人代議士の集まりにも顔を出しますが、そこでも後ろめたさを感じます。さらに恩師である穂高とも再会し、父・直言の死を報告します。寅子の心が定まらないまま、週の中盤が過ぎていきます。

第49回(6月6日・木)花岡が「どうなりたいかは自分で選ぶしかない」と背中を押す

迷う寅子に、思いがけない再会が訪れます。第49回は、寅子の転機となる言葉が交わされる回です。

ベンチで弁当を分け合う寅子と花岡

悩みを抱えてベンチに座る寅子の前を、花岡悟が通りかかります。かつて寅子と同じ法律の道を歩んだ花岡との、久しぶりの再会です。二人は並んでベンチに腰掛け、弁当を口にしながら言葉を交わします。

寅子が闇市で食料を手に入れていることを花岡は知りますが、彼はそれを責めません。生きるための選択を否定せず、寅子の今をそのまま受け止めます。公園ではGHQのホーナーからチョコをもらう場面もあり、占領下の日常がさりげなく差し込まれます。

「前も今も全部君だよ」という励まし

花岡は寅子に「前も今も全部君だよ。どうなりたいかは自分で選ぶしかない」と語りかけます。過去の自分も今の自分も否定する必要はない、進む道は自分で決めればいいという励ましでした。「堂々としろ」と微笑む花岡の言葉が、寅子の迷いに光を差し込みます。

その夜には、久藤とホーナーが猪爪家を訪ねてきます。寅子の周囲が少しずつ動き出すなか、花岡の一言が次の回での寅子の覚醒へとつながっていきます。

穏やかに寅子を肯定する花岡のシーンは、この後の展開を知ると一層胸に迫ると語られています。弁当を分け合う場面が後々まで語り草になったようです。

第50回(6月7日・金)寅子が「好きでここにいるんです!」と神保に反論する

寅子が本来の自分を取り戻します。第50回は、第10週の感情のクライマックスです。

穂高の的外れな申し出に怒る寅子

穂高は、かつて寅子が妊娠による体調不良で倒れて以来、彼女を気に病んでいました。その負い目から、穂高は寅子に「別の職を紹介する」と申し出ます。家庭教師のような、法の道から外れた仕事の提案でした。

善意から出た申し出でしたが、寅子にとっては的外れなものでした。これに激怒したことが、かえって寅子の本心に火をつけます。穂高の謝罪を受けつつも、寅子は法の道を進む決意を固めます。

「好きでここにいる」と神保に堂々と立ち向かう

本来の姿を取り戻した寅子は、民法改正審議会で神保に一歩も引かず反論します。「でも私は無理に法律を学び続けたわけじゃない。好きでやってたんです。好きでここにいるんです!」と、自分の言葉で訴えます。

寅子は「家のまえに、ひとりひとりの尊厳を」という視点を述べ、専門家でない女性にも伝わる口語体への改正にも力を注ぎます。寅子節が完全に戻った瞬間でした。この後、民法改正案は7月に提出され、12月に成立したとされます。そして週の締めくくりに、寅子は花岡が闇物資を拒み、栄養失調で餓死したことを知らされます。法を守ったがゆえの死が、寅子に重くのしかかります。

寅子の覚醒の高揚と花岡の死の知らせが同じ週に置かれた構成は、放送当時も大きな反響を呼んだそうです。喜びと喪失が背中合わせの一週間でした。

『虎に翼』第10週のネタバレまとめ

第10週「女の知恵は鼻の先?」は、寅子がアポなしで法曹会館に乗り込み、ライアンこと久藤頼安の口添えで民法調査室に職を得るところから始まります。新憲法に合わせた民法改正という大仕事を前に、寅子は神保教授の保守的な議論に押され、かつて軽蔑していた「すんっ」をしてしまい、桂場に「うすっぺら」と評されます。迷う寅子の背中を押したのは、偶然再会した花岡の「どうなりたいかは自分で選ぶしかない」という言葉でした。穂高の的外れな申し出に怒った寅子は本来の姿を取り戻し、「好きでここにいるんです!」と神保に堂々と反論します。週の終わり、寅子は法を守って餓死した花岡の死を知らされ、喜びと喪失が交差する一週間となりました。

『虎に翼』第10週──脚本の選択を読む

この週で印象的なのは、主人公にあえて「すんっ」をさせた構成です。寅子はこれまで、女性が本心を押し殺してやり過ごす態度を軽蔑してきました。その寅子自身が同じ振る舞いをしてしまう。理想を掲げる人物にも弱さがあると描くことで、再起の物語に厚みを持たせたのではないかと感じられます。完璧なヒロインではなく、つまずきながら自分を取り戻す姿に説得力が生まれた気がします。

もう一つの選択は、寅子の覚醒と花岡の死を同じ週に重ねた点です。法を信じて生きた花岡が、その法ゆえに命を落とす。寅子が法の道に戻る喜びの裏で、法の限界が突きつけられます。光と影を一週間に同居させる構成は、本作が一貫して持つテーマ性の表れではないかと思います。久藤というつかみどころのない新キャラを投入し、重い主題を軽やかに進めるバランス感覚も、この週の見どころでした。

花岡の餓死は、実際に戦後の食糧難のなか闇米を拒んで亡くなった裁判官の逸話が下敷きにあるとされ、史実に根ざした重い場面だったそうです。
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