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『マッサン』第20週「夏は日向を行け 冬は日陰を行け」ネタバレあらすじ感想

『マッサン』週別あらすじ・ネタバレ

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目次

『マッサン』第20週のあらすじ(俯瞰)

『マッサン』第20週「夏は日向を行け 冬は日陰を行け」は、戦時下で敵国人となったエリーの身に、これまでで最も大きな危機が降りかかる週です。海軍の指定工場となった亀山の蒸溜所では、ウイスキーの大量生産が始まります。品質より量を求める軍の方針に、政春は苛立ちを抑えきれません。一方、街ではエリーへの差別が激しくなり、子どもたちに石を投げられる場面まで描かれます。大阪の恩人キャサリンは、エリーを安全なスコットランドへ帰そうと余市を訪れ、形だけの離婚を政春に勧めます。やがて特高警察がスパイ容疑でエリーを連行しようとし、亀山家は最大の山場を迎えます。第115回から第120回までの6話を、核心シーンとともに追っていきます。

第115回(2月16日・月)エマが「お母さんは敵国人じゃない」と叫ぶ

第20週の幕開けは、戦争がエリーと亀山家の日常を侵し始める回です。海軍の指定を受けた蒸溜所と、街で強まる差別が同時に描かれます。

品質を捨てる増産命令に苛立つ政春

海軍の指定工場となった亀山の蒸溜所では、ウイスキーの大量生産が命じられます。求められるのは質ではなく量でした。本物のウイスキーづくりに人生を懸けてきた政春にとって、品質を軽んじる方針は受け入れがたいものです。それでも増産は国の命令であり、政春は割り切れない思いを抱えながら生産を進めることになります。戦時下では、職人の理想より軍の都合が優先される現実が、ここで突きつけられます。本物を追い求めてきた政春が、その信念を曲げざるを得ない状況に置かれる構図です。

男手が次々と戦場へ取られるなか、蒸溜所では女性たちが力仕事を担うようになっていました。働き手の確保も難しくなり、戦争が現場の隅々にまで影を落としている様子が描かれます。理想のウイスキーから遠ざかる悔しさを抱えながらも、政春は与えられた仕事を投げ出すことはしません。職人としての矜持と、国の命令との板挟みが、この回の政春の表情ににじみます。

石を投げられる母をかばう娘

街ではエリーが「敵国人」として扱われ、子どもたちに石を投げられてしまいます。エリーは外出を控えるようになり、亀山家にも差別の影が忍び寄ります。そのとき立ちはだかったのが娘のエマでした。エマは「お母さんは敵国人じゃない。日本人よ」と毅然と言い切り、母をかばいます。スコットランド人の母を持ちながら日本で育ったエマが、自分の言葉で母を守る姿は、この週の重い空気のなかで強い印象を残しました。

母を守ろうとするエマの言葉には、自分自身のアイデンティティへの思いも込められています。日本で生まれ育った娘が、母の出自ゆえに向けられる悪意とどう向き合うのか。差別が家族の絆を試す構図が、第115回から鮮明になります。エリー本人ではなく娘のエマが声を上げる順番にしたことで、戦争が次の世代にまで影響を及ぼす重さが伝わってきます。

戦争がもたらす理不尽は、ウイスキーづくりにも家族の暮らしにも及びます。翌回からは、その渦中に新たな人物が加わっていきます。

敵国人と呼ばれる母を、娘のエマが日本語で守るんですね。差別を真正面から描く朝ドラは珍しく、放送当時も語り草になった場面だそうです。

第116回(2月17日・火)未亡人・美紀と娘の秀子が工場にやってくる

働き手の男が次々と徴兵されるなか、蒸溜所に新しい人手が加わります。後の悲劇の火種となる母娘の登場回です。

明るい秀子はエリーとエマに打ち解ける

求人に応じて、未亡人の中村美紀(堀内敬子)と娘の秀子(黒島結菜)が工員として雇われます。「デコ」と呼ばれる秀子は明るくまっすぐな性格で、すぐにエリーやエマと打ち解け、楽しそうに仕事をこなします。男手が戦場に取られ、女性が力仕事を担うようになった時代背景が、この母娘の採用に表れています。秀子の屈託のなさは、緊張が続く亀山家に一瞬の明るさをもたらします。

秀子はエマと年が近いこともあり、自然と打ち解けていきます。敵国人という言葉が飛び交う時代に、出自を気にせずエリー親子と接する秀子の存在は、亀山家にとって救いでもありました。新しい工員として懸命に働く秀子の姿は、戦時下でも変わらない若さと素直さを感じさせます。この明るさが、後に明かされる母娘の事情との対比を一層際立たせていきます。

夫を戦争で失った美紀の複雑な感情

一方、母の美紀は職場になかなか馴染めません。夫を戦争で亡くした美紀にとって、敵国であるイギリス出身のエリーの存在は素直に受け入れられないものでした。しかも美紀の夫は、英国軍との戦いで命を落としたとされます。そのためエリーを見るたびに、夫を奪った国を思い出してしまうのです。エリーに非がないと頭では分かっていても、感情がそれを許しませんでした。

仲睦まじい政春とエリーの夫婦を目にするうち、美紀の胸には羨望と敵意が入り混じった複雑な感情が芽生えていきます。自分は夫を失ったのに、敵国出身の女性が幸せな家庭を築いている――その理不尽さが、美紀の心をむしばんでいきました。この回ではまだ静かな伏線ですが、美紀の屈折した思いが、後の大きな出来事につながっていきます。

娘は溶け込み、母は距離を取る。同じ母娘でもエリーへの感情は正反対でした。その温度差が、週の後半で物語を動かします。

秀子役は黒島結菜さんですね。後に朝ドラ「ちむどんどん」でヒロインを演じることになる人で、若手時代の出演として振り返られることも多いようです。

第117回(2月18日・水)キャサリンが「形だけでも離婚を」と説く

大阪時代の恩人が余市にやってきます。エリーの安全をめぐり、政春が初めて「離婚」という選択肢を突きつけられる回です。

スコットランドへの帰国を誘うキャサリン

大阪で世話になった恩人キャサリン(ビビアン・スー)が、突然余市の亀山家を訪ねてきます。夫とともにイギリスへ渡ることを決めたキャサリンは、戦況の悪化で外国人への迫害がますます強まる現状を案じ、エリーにも一緒にスコットランドへ帰らないかと誘います。日本にいる限り、エリーの身は危険にさらされ続ける。だからこそ祖国へ戻るべきだ、というのがキャサリンの思いでした。

しかしエリーは日本に残ると言い張り、頑として首を縦に振りません。亀山家こそが自分の居場所であり、政春とエマと離れて生きる気はないという、エリーの強い意志がにじみます。大阪時代から苦楽をともにしてきたキャサリンの誘いですら、エリーの決意を揺るがすことはできませんでした。エリーにとって日本を離れることは、家族を捨てることに等しかったのです。

形だけの離婚という重い提案

説得が通らないと見たキャサリンは、政春に向き直り、「形だけでも離婚して、エリーを帰すほうが安全だ」と説きます。船に乗ってイギリスへ渡るには、敵国人ではなくなる手続き、つまり離縁が必要だと政春は知ります。愛するエリーを守るために、夫婦の縁を切らねばならないかもしれない――その矛盾に政春は深く苦悩します。守るための別れという選択肢が、ここで重くのしかかります。

離婚という言葉が、夫婦の不和からではなく、命を守るために持ち出される。この逆説こそ、戦時下の理不尽さを象徴しています。政春はエリーを手放したくない一方で、そばに置くことがエリーを危険にさらすという現実とも向き合わねばなりませんでした。恩人の言葉は、政春の心に消えない問いを残します。離婚すべきか、ともに残るべきか。答えの出ない苦悩が、翌回さらに深まります。

守るために離婚する、という逆説が切ないですね。キャサリンは大阪編からの恩人なので、その人の口から告げられるぶん言葉の重みが増します。

第118回(2月19日・木)ハナが「本当の愛とは」と政春を諭す

特高の影が亀山家に迫ります。離婚をめぐる政春の迷いに、思わぬ人物が決断を促す回です。

増える特高の視察に苦悩する政春

戦況が悪化するなか、特高(特別高等警察)による蒸溜所への視察が回を追うごとに増えていきます。敵国人のエリーがいる亀山家は、常に監視の目に晒される立場でした。ウイスキー工場という重要施設に外国人がいること自体が、特高にとって格好の口実になっていきます。エリーを国へ帰すべきか、それともそばに置き続けるべきか。政春は答えを出せないまま、日に日に追い詰められていきます。

離婚届を前にしても踏み切れない政春の迷いが、この回では丁寧に描かれます。エリーを守りたいのに、その守り方が分からない。手元に置けば危険が増し、手放せば心が引き裂かれる。どちらを選んでも痛みが伴う状況に、政春は身動きが取れなくなっていました。エリー本人も家族からの手紙に心を揺らし、迷いを深めていきます。

姉ハナの厳しくも愛のある言葉

そんな政春に、姉のハナが厳しい言葉を投げかけます。「愛を言い訳にして、相手を危険な目に晒してはいけない。本当の愛とは、相手のことを本気で考えることだ」。エリーをそばに置きたいという政春の思いが、かえってエリーを危険にさらしているのではないか――ハナの指摘は、政春の急所を突くものでした。

身内だからこそ言える厳しさが、迷う政春の背中を押します。自分の気持ちを優先するのか、それともエリーの安全を最優先するのか。ハナの問いは、政春に覚悟を迫るものでした。家族の言葉が、政春の心をついに一つの決断へと押し出していきます。守りたい気持ちと、守るための別れ。ハナの言葉を受け、政春の心はついに動き出します。その決断が、翌回の最大の危機と交差します。

第119回(2月20日・金)特高がエリーをスパイ容疑で連行しようとする

政春が苦渋の決断を下した直後、亀山家を最大の危機が襲います。第20週で最も緊迫する回です。

離婚と帰国を決意した政春

ハナの言葉に背中を押された政春は、ついにエリーとの離婚と、スコットランドへの帰国を決意します。愛するエリーの命を守るため、自ら夫婦の縁を断つという重い選択でした。エリーをイギリスへ帰すことが、いま政春にできる最大の愛だと考えたのです。長く迷い続けた政春が、ようやく一つの答えにたどり着いた瞬間でした。

ところが、その決意を固めたまさにその矢先、亀山家を予想もしない事態が襲います。守るための別れを選んだ瞬間に、別の形の脅威が現実となるのです。政春が下した苦渋の決断が間に合うより早く、危機のほうが先に押し寄せてきました。皮肉な巡り合わせが、亀山家を一気に窮地へと追い込みます。

家宅捜索と連行への抵抗

特高警察がスパイ容疑でエリーを連行しようと、亀山家に踏み込んできます。家中を荒らして証拠を探し回り、エリーを引き立てようとする特高に対し、政春は必死で抵抗します。エリーを守ろうと熊虎も加わり、亀山家は連行を食い止めようと立ちはだかります。スパイなどであるはずがないエリーが、敵国人というだけで連れ去られそうになる――戦時下の理不尽が頂点に達する場面です。

誰がエリーをスパイだと密告したのか、この時点では明かされません。身に覚えのない容疑で連れ去られようとするエリーと、それを止めようとする政春たちの姿が、見る者の胸を締めつけます。愛する妻が目の前で連れ去られようとする絶体絶命。亀山家の必死の抵抗の行方は、最終話となる第120回に持ち越されます。

離婚を決めた直後に連行とは、展開が二重に苦しいですね。守ろうとした矢先に最大の危機が来る構成で、金曜の引きとして強烈でした。

第120回(2月21日・土)政春が「家族3人離れない」と工員の前で誓う

連行の危機がどう収まるのか。そして容疑の背後に誰がいたのか。第20週を締めくくる回です。

海軍士官の介入でエリーが解放される

連行されかけたエリーを救ったのは、偶然居合わせた海軍士官でした。蒸溜所がウイスキーを納める海軍にとって、亀山は大切な工場です。士官は半ば恫喝めいた説得で特高を退け、エリーはその場で解放されます。皮肉にも、敵国人扱いされてきたエリーを救ったのは、軍に協力するウイスキー工場という立場でした。危機を脱したことで、亀山家にも一筋の光が差します。

この一件を通して、政春はエリーの揺るがぬ決意を改めて知ります。何があっても日本で、家族とともに生きる――そのエリーの覚悟に、政春は応えることを決めました。政春は離婚届を破り捨て、家族3人で日本に残ることを決めます。工員たちの前で「これからもエリーと一緒に暮らす」と宣言し、協力を求める政春の姿が描かれます。守るための別れではなく、ともに残る覚悟を選んだ瞬間でした。

密告の正体は美紀だった

実は、エリーをスパイと疑わせたのは美紀の密告でした。エリーを案じる妹ヘレンからの手紙を、美紀は敵国との通信と思い込み、特高に告げていたのです。差別の連鎖が、思わぬ形でエリーを窮地に追い込んでいたことが、ここで明かされます。身近な職場の同僚が容疑の発端だったという事実は、戦時下の人間関係の歪みを浮かび上がらせます。

夫を英国との戦いで失った美紀は、イギリス出身のエリーをどうしても許せませんでした。やがて真相を抱えたまま、美紀は工場を去っていきます。明るく職場に馴染んだ娘の秀子とは対照的に、母の美紀の傷は癒えないままでした。美紀が憎んでいたのはエリー本人というより、夫を奪った戦争そのものだったのかもしれません。差別と戦争が、ひとりの女性の心に何を残したかが浮かび上がります。

家族3人で残ると誓った政春。最大の危機を乗り越えた亀山家ですが、戦争はまだ終わりません。第20週はその覚悟を刻む週となりました。

密告の犯人が美紀だったと最後に明かされる構成でしたね。エリーを憎んだのではなく、夫を奪った戦争を憎んでいた――そう思うと美紀もまた被害者なのかもしれません。

『マッサン』第20週のネタバレまとめ

第20週「夏は日向を行け 冬は日陰を行け」は、海軍指定によるウイスキー大量生産と、エリーへの差別激化が同時に進む週でした。子どもに石を投げられたエリーをエマが「日本人よ」とかばい、新たに雇われた美紀・秀子母娘のうち美紀がエリーへの敵意を募らせます。恩人キャサリンは形だけの離婚で帰国するよう勧め、ハナの言葉に押された政春は離婚と帰国を決意します。しかし直後に特高がスパイ容疑でエリーを連行しようとし、海軍士官の介入で解放。密告の主が美紀と判明し、政春は家族3人で残ると誓いました。

『マッサン』第20週──物語の読みどころ

この週の核心は、「守るための別れ」と「ともに残る覚悟」のあいだで揺れる政春の選択だと言えます。離婚という言葉が、夫婦の不仲ではなく愛ゆえに持ち出される逆説が、戦争の理不尽さを際立たせていました。週サブタイトルの「夏は日向を行け 冬は日陰を行け」は、順境でも逆境でも己の道を貫けという意味のことわざとされます。差別の只中でも日本に残ると言い張るエリーの姿に、この言葉が重なって見えるのではないでしょうか。密告者の美紀を単純な悪役にせず、戦争で夫を失った被害者として描いた点も、本作の奥行きを感じさせる読みどころかもしれません。

差別する側も戦争の被害者として描くあたりに、この週の深さがありますね。誰が悪いと断じきれない構図が、見る人の心に長く残ったようです。
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