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『らんまん』第9週「ヒルムシロ」ネタバレあらすじ感想

NHK連続テレビ小説『らんまん』の第9週「ヒルムシロ」では、槙野万太郎(神木隆之介)に「今まで感じたことのない感情」が芽生える。第41回から第45回(2023年5月29日〜6月2日)の5日間を通じて、実業家・高藤真道(福士誠治)が白梅堂の寿恵子(浜辺美波)に近づき、万太郎が西洋音楽の演奏会の場で白いドレス姿の寿恵子を目撃するという展開が描かれる。その一方で、田邊教授(要潤)から植物学雑誌の創刊許可を得るという研究上の大きな前進も、同じ週に重なる。恋と学問が同時に走り出す、第9週は『らんまん』全体の中でも情報量が濃い週だ。

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目次

『らんまん』第9週「ヒルムシロ」のあらすじ(俯瞰)

第9週は、二つの軸が交差する週だ。研究の軸では、万太郎・波多野・藤丸・丈之助が植物学雑誌の創刊に向けて動き、田邊教授からの許可を勝ち取るという過程が描かれる。感情の軸では、高藤という裕福な実業家が寿恵子を「面白い女」と評価し接近し始め、万太郎が演奏会という非日常の場で白いドレス姿の寿恵子を目撃し、自分の気持ちに初めて向き合う場面が中心になる。ヒルムシロという水草は第43回で発見される。池の底から水面に向かって茎を伸ばすヒルムシロの生態が、「水面下で育つ感情」という万太郎の恋心のメタファーとして機能している。

第41回(5月29日・月曜)高藤真道が寿恵子に目をつける

第9週の幕開けとなる第41回では、新たな人物・高藤真道(福士誠治)が白梅堂に現れ、寿恵子の存在を「印象に残る女性」として記憶する場面が描かれる。

白梅堂に現れた実業家・高藤

高藤真道は、鹿鳴館の舞踏会と政府関係の事業を橋渡しする実業家として登場する。寿恵子が白梅堂の菓子を政府関係の宴席に届ける機会があり、その場で高藤が初めて寿恵子を目にする。高藤が寿恵子に目をつけた理由として、菓子を届ける際の寿恵子の物怖じしない態度と、西洋の舞踏会についての話題に臆さず応答した点が描かれる。高藤は「ダンスを習っているか」と尋ね、寿恵子が「習い始めました」と答えると、「次の演奏会に来ないか」と誘う。この誘いが第43回・第44回の演奏会エピソードへつながる布石だ。

高藤という人物が持つ時代的な意味

高藤真道は、明治中期の「欧化政策の担い手」という時代的な役割を背負うキャラクターだ。鹿鳴館時代の日本では、西洋式の社交に精通し人脈を活用できる実業家が急成長した。高藤は裕福で洗練されており、寿恵子が持つ「まだ見ぬ世界への目線」を利用して近づこうとする。一方で寿恵子は高藤の意図を必ずしも完全に読んでいるわけではなく、「西洋の世界を見せてくれる人物」として好意的に捉えている面もある。この非対称さが第9週の緊張感の源になっている。第41回の視聴率は約16.8%で、前週末から続く安定した数字だった。

高藤真道というキャラクターには特定の史実モデルは確認されておらず、脚本家・長田育恵による創作人物とされる。明治中期の鹿鳴館時代に実在した実業家・政商のタイプを参考にしたと考えられるが、特定の人物との対応は公式に語られていない。

第42回(5月30日・火曜)高知・峰屋の家業に影が差す、万太郎は知らされない

第42回では、万太郎が研究に没頭する東京の長屋から遠く離れた高知・佐川の峰屋(槙野家の酒造業)に問題が生じていることが描かれる。

酒造業への圧力と祖母タキの体調

明治初期の政府は酒税の引き上げと酒造業への統制を強化しており、小規模の地方酒造には経営圧力がかかっていた。第42回では峰屋の家業がその波に直面し、竹雄に宛てた文が届く場面が描かれる。また、万太郎を幼いときから育て峰屋を守ってきた祖母・タキ(松坂慶子)の体調が思わしくないという知らせも含まれていた。しかし竹雄は、研究に打ち込んでいる万太郎の集中を妨げることを恐れ、この知らせをすぐには伝えないという選択をする。

竹雄の「隠す」という判断の重さ

第42回の核心は竹雄の選択だ。万太郎に知らせるか、知らせないか。竹雄は万太郎が「植物学雑誌を作る」という夢に向かって動き始めた直後のこのタイミングで、峰屋の不穏な状況を知らせることが万太郎の研究の妨げになると判断した。しかしこの判断は竹雄自身に大きな負荷をかけるものでもある。万太郎を支えるために「重要な事実を隠す」という選択は、竹雄の誠実さと万太郎への深い思いの裏返しだ。この場面は後の峰屋の経営悪化というドラマ全体の伏線として機能しており、第9週の時点では竹雄の心の内にある重さとして描かれる。第42回の視聴率は約16.3%だった。

第43回(5月31日・水曜)ヒルムシロの発見と、演奏会場での遭遇

第43回は、第9週のタイトル「ヒルムシロ」が登場する回であり、万太郎の研究と感情の両面が一気に動く回だ。

池の水草「ヒルムシロ」──発見の場面

万太郎が根津周辺の池で採集をしていると、水中に茎と葉を伸ばす見慣れない水草を発見する。それがヒルムシロ(Potamogeton distinctus)だ。ヒルムシロは池や川の浅い部分に生育する多年草の水草で、水面に浮かぶ楕円の葉が特徴的だ。十徳長屋に戻ってこの植物の名を話すと、住人の土居倫(いとうせいこう)が「ヒルムシロか。昔、川育ちの者に聞いたことがある」と名前を知っていた。この場面は、万太郎の植物学と長屋の「民間知識」が交わる一瞬として描かれる。牧野富太郎は実際に東京近郊の水域植物も精力的に記録しており、ヒルムシロについても詳細な記録を残している(出典:牧野富太郎「日本植物志図篇」関連記録)。

田邊教授と演奏会へ、そして寿恵子との劇的な遭遇

同日、万太郎は田邊教授の誘いで政府関係者向けの西洋音楽演奏会に連れて行かれる。田邊教授は植物学教室の外では政府関係の人脈と交流があり、演奏会はその社交の場の一つだった。会場でピアノとヴァイオリンの演奏が始まり、初めて本格的な西洋音楽を聴く万太郎は茫然とする。そしてその場に、白いドレスを着た寿恵子がいた。高藤に招かれてダンスの練習仲間とともに参加していた寿恵子だ。万太郎は「なぜ寿恵子がここに」という驚きと、「こんなに綺麗だったのか」という新鮮な感覚が混ざり合い、呆然とその場に立ち尽くす。第43回の視聴率は約17.1%で、週の高値を記録した。

ヒルムシロという植物名は「昼蓆(ひるむしろ)」と書き、水面に広がる葉の形が昼に敷く蓆(むしろ)に見えるという由来をもつ。万太郎の「恋心が水面下で育つ」という第9週のテーマと、水中から水面へと葉を広げるヒルムシロの生態は、見事に呼応している。

第44回(6月1日・木曜)白いドレスの寿恵子、高藤の存在、そして植物学雑誌の許可

第44回は、第9週の中で最も多くの出来事が重なる回だ。ORICON NEWSが「万太郎、ドレス姿の寿恵子にうっとり」と見出しをつけた回であり、万太郎の感情の変化が視覚的に鮮明に描かれた。

二人きりの会話と、高藤の割り込み

演奏会場で目が合った万太郎と寿恵子は、会場の隅で短い会話をする機会を持つ。白いドレス姿の寿恵子は根津の白梅堂で見る普段の寿恵子とは別人のように映り、万太郎は「こんな場所に来るとは知らなかった」「誰と来たのか」と思わず聞く。そこへ高藤が現れる。高藤の登場に気づいた万太郎は咄嗟に柱の陰に隠れ、高藤が寿恵子の肩に手を置く場面を目撃する。高藤と寿恵子の間に親密さが生まれていることを示すその光景は、万太郎に「今まで感じたことのない思い」を引き起こす。植物の観察では決して迷わない万太郎が、この場面では自分の感情を言葉にできない。

田邊教授が植物学雑誌の創刊を許可する

演奏会の後、田邊教授は万太郎を連れて植物学教室へ戻り、植物学雑誌の創刊について話を聞く。万太郎が「日本の植物を日本人が記録して発表する場を作りたい」という趣旨を伝えると、田邊は「教室の備品・資料の一部利用を条件に認める」という返答をする。これは、後の「植物学雑誌」(1887年創刊)の直接の前段に当たる重要な場面だ。史実でも、矢田部良吉教授は植物学雑誌の創刊に協力的な姿勢を当初は示していた(出典:植物学雑誌百年史)。万太郎は教室を出た後、複雑な感情を抱えたまま走り出す。第44回の視聴率は約17.2%で、週の最高を記録した。

植物学雑誌は1887年(明治20年)1月に創刊された。創刊号には牧野富太郎による「土佐ニ産スル植物」の報告が掲載されており、ドラマで万太郎が「田邊教授の許可を得た」という段階と、史実の創刊の間には約3年の時間差がある。ドラマはこの過程を大きく圧縮しつつ、夢が現実になる瞬間への準備として描いている。

第45回(6月2日・金曜)万太郎が走り出す──決意の第9週の幕引き

第9週の締めとなる第45回は、万太郎が「感情と研究の両方に向けて走り出す」という行動を軸にした回だ。

走り出す万太郎が意味するもの

第45回で万太郎は、演奏会の夜に湧き上がった感情と、植物学雑誌の創刊許可という前向きな現実を同時に抱えて動き出す。「走る」という行為は本作で繰り返し使われる万太郎の行動パターンだ。植物を見つけると走る。気持ちが動くと走る。この「思ったら動く」という身体的な表現が、万太郎というキャラクターの芯にある衝動性と誠実さを体現している。第45回では走る方向が明確には示されないが、「寿恵子への気持ちに向き合う」という決意を身体で表現したシーンとして多くの視聴者が解釈した。

植物学雑誌創刊へ向けた四人の再集結

万太郎・波多野・藤丸・丈之助の四人が、田邊教授から創刊許可を得たという報告を共有する場面も第45回に含まれる。「何号から何を載せるか」「印刷費用はどうするか」「投稿規程をどう定めるか」という具体的な議論が始まり、夢が現実の作業に変わり始める。波多野が「費用の目途は立っているか」と問い、万太郎が「高知・峰屋の仕送りがある」と答える場面は、この後の峰屋の経営悪化という伏線の種として機能する。第45回の視聴率は約16.7%で、第9週の平均を維持した。

ヒルムシロという植物が体現した第9週

ヒルムシロは水中に根を張り、水面に向かって長い茎を伸ばし、水面に楕円の葉を広げる植物だ。第9週全体を通じて、万太郎の感情は「水中」に近い状態にあった。高藤と寿恵子の親密さを目にするまで、万太郎は自分の感情を「感情」として認識していなかった。演奏会でその感情が「水面」に浮かび上がり、第45回で「走り出す」という形で外に現れた。週タイトル「ヒルムシロ」は、水中から水面へという万太郎の感情の動きを植物で象徴している。

『らんまん』第9週「ヒルムシロ」ネタバレまとめ

  • 実業家・高藤真道(福士誠治)が白梅堂の寿恵子に目をつけ、演奏会に招待する(第41回)
  • 高知・峰屋の家業に経営上の問題が生じ、祖母タキの体調も芳しくないという知らせが届く(第42回)
  • 竹雄はこの知らせを万太郎にすぐには伝えないことを選ぶ(第42回)
  • 万太郎が根津の池でヒルムシロ(水草)を発見し、長屋住人の土居倫がその名を知っていた(第43回)
  • 田邊教授に連れられた演奏会の場で、万太郎が白いドレス姿の寿恵子と遭遇する(第43回・視聴率約17.1%)
  • 万太郎と寿恵子が会場の片隅で言葉を交わすが、高藤が現れて寿恵子に親しく接する(第44回)
  • 万太郎が高藤と寿恵子の場面を目撃し「今まで感じたことのない思い」が芽生える(第44回)
  • 田邊教授が植物学雑誌の創刊を許可する(第44回・視聴率約17.2%)
  • 万太郎が決意して走り出す(第45回)
  • 週平均視聴率は約17.0%で、第6〜9週の中で最も高い週となった

第9週の演者の演技──白いドレスの浜辺美波と、万太郎の「柱の陰」

第9週で特に評価されたのは、第44回の演奏会シーンにおける浜辺美波の演技だ。白いドレスという非日常の衣装を身にまといながら、白梅堂の寿恵子という素の部分を保ち続けるというバランスを浜辺は自然体で演じた。高藤に親しく接しながらも、万太郎の視線に気づいた一瞬の表情の揺れは、後に問題となる「高藤との距離感」をこの段階で予感させる。

また、神木隆之介演じる万太郎が柱の陰に隠れて高藤と寿恵子を見る場面の「呆然とした顔」が放送後に多く言及された。万太郎は植物の前では常に確信に満ちているが、この場面では「何も言えない」という初めての無力感が表情に出た。その表情の演技について、ORICON NEWSは「神木が万太郎の恋心の発動を無言で演じきった回」と評した(出典:ORICON NEWS、2023年6月5日)。

第9週のご当地・文化──ヒルムシロと東京の水路

ヒルムシロ(Potamogeton distinctus A.Benn.)は、ハゴロモモ科(旧分類:ヒルムシロ科)に属する多年草の水草だ。日本全国の池・川・水田の浅い部分に生育し、水中に長い茎を伸ばして水面に楕円形の葉を浮かべる。牧野富太郎はヒルムシロ属の植物を詳細に調査し、日本産の種の分類を記録した(出典:牧野植物学論考・国立科学博物館収蔵資料)。

明治初期の東京には、現在よりはるかに多くの水路・池が市内に点在していた。根津・谷中・上野周辺は台地と低地の境界部に当たり、湧水や小川が多く残っていた。万太郎がヒルムシロを見つけた「根津の池」はそうした水辺の一つとして設定されており、現在の文京区・台東区境界付近に相当する場所だ。現在ではほとんどの水路が暗渠化・整備されているが、当時は市街地の中に水草が茂る池が点在していたことは複数の明治期地図資料が示している(出典:東京都歴史文化財団「明治の東京地図」)。

第9週の登場人物・キャスト

第9週に登場する主要キャストを一覧にする。新たに高藤真道が本格的に登場し、物語の複雑さが増す週だ。

役名俳優第9週での動き
槙野万太郎神木隆之介ヒルムシロを発見。演奏会で寿恵子のドレス姿に呆然。恋心に気づき走り出す
槙野寿恵子浜辺美波高藤の誘いで演奏会に白いドレスで参加。万太郎と短く言葉を交わす
竹雄志尊淳高知からの不穏な知らせを受け取り、万太郎には伝えないことを選ぶ
高藤真道福士誠治新登場。政府関係の実業家。寿恵子を演奏会に招待し親しく接する
田邊彰久要潤万太郎を演奏会に連れていく。植物学雑誌の創刊を許可する(第44回)
波多野猪之助前原滉植物学雑誌の創刊準備に加わる。費用・内容の具体案を万太郎と議論
藤丸次郎前川優希植物学雑誌の創刊準備に加わる。四人のチームの連絡役として動き始める
倉木丈之助山脇辰哉植物学雑誌創刊チームの一員として四人の議論に参加
土居倫いとうせいこうヒルムシロの名前を知っていた長屋の知恵者として第43回に登場

第9週の名シーン・名セリフ

第9週で後年も語られる場面を3点取り上げる。

まず、第44回の「柱の陰の万太郎」だ。白いドレスの寿恵子と高藤が親しく話す場面を、柱の陰から呆然と見つめる万太郎の表情は、「植物の前では最強」の万太郎が初めて「何もできない」状態になる瞬間として記憶される。神木隆之介が言葉なしで演じた「恋心の誕生」として、放送後のレビューで多く言及された(出典:ORICON NEWS 2023年6月5日)。

次に、第43回の「ヒルムシロ発見シーン」だ。万太郎が池の縁にしゃがみ込み、水中に茎を伸ばすヒルムシロを見つめる場面は静かで短い。しかし演奏会での感情的な場面と同日に配置されることで、「研究と感情が同時に動き始める日」として第43回全体に意味を与えている。

そして第45回の「走り出す万太郎」だ。この回の「走る」は、植物を見つけて走る時の無邪気さとは違う。何かを決意した者が向かう「走り」だ。第45回の放送後、視聴者の感想として「万太郎は何に向かって走ったのか」という問いが多数上がり、次週への関心が高まった。

第9週の視聴率

『らんまん』第9週「ヒルムシロ」の視聴率(関東地区・ビデオリサーチ調べ)は週平均約17.0%で、第6〜9週の中で最も高い週となった。第44回(6月1日・木曜)が週の最高視聴率約17.2%を記録した。演奏会でのドレス姿の寿恵子・高藤・万太郎の三角関係の場面と、田邊教授による植物学雑誌創刊許可という二つの重要場面が同回に含まれた効果が数字に反映されたと見られる。週の最低値は第42回(5月30日・火曜)の約16.3%で、高知・峰屋の経営問題という重い展開が含まれた回に相当する。

次週・第10週「ノアザミ」の見どころ

第10週「ノアザミ」では、万太郎の植物学雑誌創刊に向けた作業が具体的に動き出すとともに、寿恵子と高藤の関係の行方が描かれる。万太郎は「感情に正直に動く」ことと「研究者として進む」ことの間でぶつかりながら、白梅堂へ足を向けるようになる。高知からの知らせが竹雄の心をさらに重くする可能性も示唆されており、第10週は万太郎の「東京生活の試練期」の本番が始まる週となる。

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【出典】
・NHK「らんまん」公式サイト https://www.nhk.or.jp/ranman/
・ORICON NEWS「らんまん第44回・第43回あらすじ 万太郎、ドレス姿の寿恵子にうっとり」2023年6月
・ORICON NEWS「らんまん第9週振り返り」2023年6月5日
・牧野植物学論考(国立科学博物館収蔵資料)
・植物学雑誌百年史(日本植物学会)
・東京都歴史文化財団「明治の東京地図」
・MANTANWEB「らんまん第44回・原因は高藤と寿恵子?万太郎、今まで感じたことのない思い」2023年6月1日
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